子どもに残すもの

  2017・11・10 近藤 瑠美子

秋はきまぐれな季節ですが、私が四季の中で最も好きな季節でもあります。以前、好きな秋を書き出してみたことがあります。食欲の秋、味覚の秋、馬肥ゆる秋、実りの秋、食いしん坊ですから食べるものが真っ先に出てきます。秋は収穫の季節であり、果物や野菜など多くの食べ物が実り(旬)を迎え、だんだんと涼しくなった秋は夏バテした体調を整えるために、自然と食欲がわきます。食べることは、これからくる厳しい冬を越すために、体に栄養分を蓄えようとする動物的な本能なのかもしれません。

読書の秋、スポーツの秋、睡眠の秋、芸術の秋、行楽の秋、里の秋・・・・。どうして「秋」だけ「〇〇の秋」という表現があるのかと考えると、過ごしやすい気温に美味しい食べ物、最適な環境から様々な表現がされるようになったのではないかと勝手に解釈し、物思う秋を楽しんでいます。

それにしても、今年の異常気象は記録づくめでした。暑さが長く続いたこともあり、涼しくなったと思っている間に急に寒い!と感ずるようになり,キンモクセイの香りもコスモスの愛らしさも一瞬にして消え、ドンドン秋が冬支度をしているように感じます。

例年なら紅葉を見に出かけ、秋の味覚を満喫しているのに、今年は衣替えが一番となり、休日は冬支度に大忙しでいた。

 

 スポーツの秋に挑戦した先生がいます。麻美先生は先に行われた金沢マラソンに参加し42.195キロを完走したのです。麻美先生が金沢マラソンに参加することを聞いたのが1週間前で、今までも走っていると聞いたことがなかったので、私は勝手に友達と楽しく20キロぐらい走って雰囲気を楽しむのかなぁと思いました。しかし、参加者の中間ぐらいの記録で見事完走したのです。毎日の仕事の多忙さに負けず、新たな挑戦を成し遂げた麻美先生に感動し、先生自身も輝きのオーラを放っているように思いました。ずいぶん昔ですが、美穂先生が保育者から大学に編入したとき、アテネオリンピックの聖火ランナーとして、聖火をもって東京都を区間走しました。「運動が得意ではない自分への挑戦という」思いを書き綴り応募し、記念すべき挑戦となったようです。

 

 人生にはいろいろな挑戦をする時があると思います。挑戦を成し遂げると達成感や自己充実感を味わうことができますが、同時に挫折や、強度の緊張感や不安感に押しつぶされそうになることがあります。

私も長い専業主婦生活から保育者に復帰し、その後、馬場幼稚園の園長という重責を担いました。振り返ってみると、その25年間は無我夢中で心が休まることがないほど、いろいろな試練がありました。そんな時、聖書の次の御言葉を思い出しました。「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。」(マタイによる福音書11章28節)疲れて果てて、不平不満しか出てこない私が、聖書を読み返してみると、新しい発見をしたのでした。それまで「休ませてあげよう」ということは、荷をおろして休むことだと思っていました。長い間そう思っていましたが、聖書にはそう書いてないことに気付かされたのです。

園長として、大切な子どもたちを預かっていることを考えると、よく分かりました。保育を一緒にすることはできますが、途中半ばで園長を降りることができないのです。ではどうやって荷を下ろさずに休むことができるかと考えました。自分に与えられた荷を下ろしてしまうのではなくて、いっしょに背負ってくださっている方がいることを知りました。イエス様がどんな時も一緒にいてくださり、重荷を背負って下さることを知り、大きな慰めとなりました。それがなければ、今日まで歩んでくることができなかったと思います。

 

しかし、年を重ねるとそろそろ終活を考えなければを思ってしまいます。引き際を考えようと思っていましたが、そんな私の思いとは違って、今年は次々と挑戦することに遭遇し、今まで以上に忙しく、さらに重荷を背負う結果となりました。新しく石川県が始めた幼児教育の推進体制構築事業の幼児教育アドバイザーに委嘱され、石川県の幼稚園、保育園、認定こども園の保育のアドバイスをすることになりました。また全日本私立幼稚園幼児教育研究機構のECEQコーディネータを更新し、更に学びを深めるために、東海北陸の幼稚園にでかけることにもなりました。

そして、水面下で準備している園舎改築の作業は、日に日に重く、時間との戦いでもあります。この重荷はなぜ今なのか!とボヤキになる思いですが、私たち保育者は、人間として、または専門家として成長し続けることをいつも問われています。それは日に日に成長してゆく子どもたちと立ち向かっていくために、私たちも成長し続けていくことが必要なのです。

キリスト教保育とは保育者に子どもを従わせるのではなくて、イエス・キリストをさししめすことなのです。私たちは何もできない存在だけど、神様が守って助けて下さるから、子どもたちと一緒にイエス様を仰いで、祈りながら歩んでいく保育です。

 

話は変わりますが。今週の日曜日に白銀教会に出かけた日に驚くことがありました。私はいつもより時間が遅くなり、大急ぎで園庭に車を駐車すると、入り口付近に亜由美先生と二人の女性が話しているのが見え、よく見ると私の方に手を振っておられました。

 近づいてみると、卒園生のAちゃんとお母さまでした。東京からハンドボールの試合を応援することと、私に会いに来られたとのことでした。連休だったので幼稚園は留守で、あきらめられず日曜日に、もう1度幼稚園に行って、教会まで訪ねてくれたことを知りました。Aちゃんは幼稚園時代から背丈が高い女の子でしたが、今はモデルのように容姿端麗でした。毎年、年賀状の交換をしていたのですが、現在大学4年生で就職も内定しているAちゃんの成長に年月の流れを感じました。でも、すぐにハサミ事件のAちゃんにタイムスリップしていました。幼稚園時代のAちゃんはリーダーシップのある、なんでもできる子という存在で、失敗や、うまくいかなことがないという存在でした。

 しかし、卒業近くにAちゃんにとっては大きな事件がありました。製作をしていたAちゃんはお友達のはさみを使っていました。そのため、お友達はAちゃんの終わるのをじっと待っていたのです。「Aちゃんのハサミどうしたの?」と聞くとAちゃんは「ハサミ無くなったから!」と返事だけで困った様子はありませんでした。私はこの時Aちゃんと向き合おうと思いました。Aちゃんは初めての挫折に向き合うことができずにいることを、お母さんに伝え、Aちゃんが立ち上がるまで一緒に付き合っていこうと話しました。Aちゃんが必要と思い、自分からハサミを探そうとするまで待ち続けました。その後、先生と一緒に探したり、お母さんと一緒に探したり、自分で無くしたハサミを見つけることに付き合いました。そして、ハサミを見つけた時、Aちゃんもお母さんと一緒に泣きました。自分の弱さに向き合い、見つけたハサミをお母さまは「宝にします!」と言って、Aちゃんは見つけたハサミと一緒に卒園したのです。

今回、Aちゃんは幼稚園でハサミを見つけた部屋を見て、「あっここがあのハサミのあったとこ!」といったそうです。お母さんは「先生、私にはこの幼稚園が子育ての原点でした。子育ては待つことといわれ、あれから子育ての見方考え方が変わりました。」と親子でハサミを思い出し、いろんなことを乗り切ることができたことを話してくれました。私はその言葉に感動しました。しかし、園長が子育ての原点を教えたのではありません。なによりも挫折を通して、保護者自身が掴み取り、子どもから気付かされ教えられたのだと思います。Aさんたちが心を豊かに成長されたことを改めて知ることができ、幼児教育の重さ、尊さをかみしめる時となりました。

  

 12月を待たずして街にはクリスマスのイルミネーションが輝き、どこからともなく讃美歌が流れ、クリスマス一色になりました。先日「クリスマスって何の日?」と子どもたちに聞きました。子どもたちの第一声は「サンタさんからプレゼントもらう」でした。この子どもたちがアドベント(クリスマスを待つ期間)の一日一日を、クリスマスのお話を聞き、賛美歌を歌い、お部屋をきれいにしてクリスマスを待つうちに、サンタクロースからプレゼントをもらう楽しみだけから少しずつ変化をしていきます。

 「献金は神様の御用のため。困っている人や病気の人を助けるため」「プレゼント作りはお母さんやお父さんに喜んでもらうため。」と少し前までは自分がもらうことばかりを考えていた子どもたちが、自分以外の大切な人にプレゼントすることを知り、愛や喜びを与える人に変えられていくのです。

今年のクリスマス。与える幸せに一歩近づきたいものです。







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