つながって                

201年4月12日    園長 近藤瑠美子

 

お子様のご入園、ご進級おめでとうございます。

馬場幼稚園は今年創立110年を迎え、念願の園舎改築事業が大きく動き出しています。現在の地で0歳から6歳児の教育・保育ができる園舎。子どもたちの発達に合わせ、思いっきり遊びこむ動線を考えた園舎。地域の人たちに愛される園舎を建てるために、専門家の助言を頂きながら準備をしています。

 

3月に「いつまでも仲間だよ」と送り出した26名の子ども達の温もりを懐かしんでいる私に、「○○です。卒業しました。お世話になりました。」「先生とうとう転勤でました。」「○○です。小さかったあの子が親元から巣立ちです。幼稚園時代の子育てって1番楽しかったんですね。」など、卒業、転居、合格のメールが届きました。。そんな中、『3時間後に幼稚園に行っていいですか』という電話があり、T君がお父さんと3時間かけて神戸から、小学校の卒業証書をもって来てくれました。数日後には、真新しい制服を着た高校生が8人高校入学の報告に来てくれ、ファミリールームの子どもたちと汗だくだくになりながら、遊んでくれました。卒園しても『馬場幼稚園大好き』の子どもたちが人生の節目に顔を見せてくれることに、園長冥利とウルウルしてしまいます。

 

桜の季節になると思い出すことがあります。それは私が馬場幼稚園に赴任した27年前のことです。当時、ばら組の担任をしながら園長見習をしていたので、緊張と多忙の毎日を過ごしていました。

ある日、園長先生に呼ばれて「近藤さん、幼稚園の先生は花を愛でるくらいのゆとりがないとだめよ。タクシーを呼びなさい。」と言われました。「えっ!こんなに仕事がいっぱいなのに!」と心の中で思いながら、言われるまま4人の先生と一緒にタクシーに乗り込みました。タクシーで出かけたのは、卯辰山、その後兼六園、どこも桜は満開でした。桜見物の後は茶店に上がって、花見団子を頂きました。5月には竹の子飯を食べに別所に連れて行ってもらいました。

当時は花の美しさよりお店で花見団子や竹の子飯をいただいたことを喜んでいましたが、今は自然の美しさに心が休まったことが懐かしく、この季節になると蘇ってきます。

利便性が重んじられる今、雑多なことに心が奪われ、神様が備えてくださった美しいものに心を留めることを忘れているように感じ、今年度は「希望」と「ゆとり」を求めて歩もうと思います。

 

昔の話で恐縮ですが、私が保育者になった頃は「子どもはなにも分からない。できない」「大人を発達の到達点とし、成長は早いほどよい」という発達の捉え方でしたが、今は「子どもたちは学ぼうとする欲求と鋭い感性を持ち、自ら発達し、発達の試練をいくつも乗り越え自分づくりをしていく」という発達観に変化しています。

 

幼稚園では「このほうがいい」「このほうが使いやすい」と、先生が生活の先取りをするのではなく、一緒に暮らしながら丁寧に集団生活のルールを伝えていきたいと思っています。1年のある時期がくると、園生活がなんだかしっとりしてきたと感じる時がありますが、それは自然にしっとりするのではなく、先生が子どもに寄り添いながら作り上げていくものです。先生が「これは大事なもの」と思うものを子どもも「大事なもの」と思えるようになるし、子どもが「一大事」と言って知らせてくる時、行ってみると大人から見ても本当に「一大事」であることがあります。片付けも「ここは自分達の大事なところ、これは自分達の大事なもの」と思えるようになるまで大人が丁寧に接することが大事だと思います。

 

今、大人の願いがどうしても、「かしこく」「はやく」「上手に」となりやすい中で、子ども達の中には、安心して自分らしさを出せないで悶々としている子どもに出会うことがあります。以前、こんなことがありました。

年長の女の子が「わたし、お母さんに だっこしてもらったことあるかな」と聞いたことがあります。「もちろんあるよ。お母さんはAちゃんのこと大好きだもんね。」と答えると、Aちゃんは「ほんとかな。」と首を傾げました。「Aちゃん、お家に帰ってお母さんにだっこしてもらっている写真見せてって、頼んでごらん。」と話しました。すると、Aちゃんは「写真じゃ分からんもん。」と言いました。「なるほど、そうか。」と思いながらも正直驚いてしまいました。

Aちゃんは長子でお母さんとの信頼関係がつき始め、一方では嫉妬心も出始めた頃、下に弟が生まれたのでした。早くから大人を見て模倣する子で、大人のように行動することで、大人の期待に応えようとしていました。本当はお母さんに甘えたいのに、お姉さんらしく振る舞い、甘えることを学習してこなかったための、不安定や自信のなさが、友だちとの人間関係でトラブルとなっていました。

 

ほんとうに子ども達のよりどころとなる大人になっているか、育とうとする子どもと育てようとする大人のかかわり方はどうあるべきか、私たち保育者も問いかけ、問い直しつつ歩みたいと思います。

 

桜の木が美しい花を咲かせ葉を茂らせるには、しっかりした根っこ、太い幹や茎を育てることが大切です。このことは人間も同じです。子どもが大人になったとき、自分の力で人間らしく生きていけるようになるためには、その子の根っこ、幹をしっかり育てることがポイントです。そうすれば、子ども達が大人になったとき、一人ひとりがその人らしく素敵な花を咲かせることでしょう。

 

今、日本の国が新しく生まれかわり歩みだすためには、人々は手を取り合って、「つながり」ながら生きていくことが大切だと感じています。「つながり」という言葉は、ふだん、あまり注意をはらうことがなく、私たちは当たり前のように、「つながり」の中に生きています。空気みたいに気に留めたり、驚いたり、感謝したりすることがありません。でも私たちが生きていく中で、空気や水みたいに「つながり」は、なくてはならない大切なものなのです。

「つながり」とは「自分自身のこと、出会っていく相手のことを、共に大事にする」ということではないかと思います。人は誰かに助けられながら、たえずつながって生きていると知るときに、一人ひとりはちっぽけな存在だけどそれぞれが「かけがえのない存在である」ということに気づき、共に生きる喜びを知ることになると思います。

 大災害は私たちに「つながり」の大切さを教えてくれました。

ひとりの人間が、人生の中でもっともゆっくり成長していくのが幼児期といえると思います。この幼児期に「つながり」を大切にした保育を実践していきたいと思います。キリスト教保育とはキリストの御ことばを聴き、共に成長しあう保育です。神様の愛が子どもたちや保護者の皆様に豊かに注がれますように、祈りながら共に歩んでまいりたちと思います。皆様方のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。        

 

私たちの保育の業は、目に見えるもの、すぐに答えのでるもの、個人の成功や勝ち負けの結果を追い求めるものでもありません。子どもたちとともに『自分だけ』から『友達と一緒』と祈り、日々の保育の中で神さまが与えてくださった命と賜物を守り育てていきたいと思います。









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