厳しい寒さに園庭の桜も球根も花を咲かせるかと心配していましたが、春の陽気に桜は満開となり、木蓮、チューリップ、パンジー、
水仙が一斉に花開き甘い香りを漂わせています。


しかし、ここ数日の急な冷え込みで満開の桜が散り急ぎ、子ども達の登園まで桜がもつか、はらはらしながら見上げています。


 お子さまのご入園、ご進級を心からお喜び申し上げます。

 進級の子どもたちは新しいクラス、先生、友だち、遊びに夢を膨らませ、新学期を迎えたことと思います。新入園の子どもたちは
慣らし保育で幼稚園に少しずつ慣れてきましたが、お母さんとの別れに「ママ!おうちに帰りたい!」と涙する子もいると思います。

また、子どもを送り出すお母さんも、「この子は幼稚園で大丈夫かな。友だちと遊べるかな。困った時に先生に言えるかな。ケンカしないかな。
トイレにいけるかな。」と、不安がいっぱいで後ろ髪を引かれる思いで、子どもとの別れの時間を過ごされているように思います。



 子どもたちが幼稚園の保育室に入り、遊ぶのは“あたりまえ”だと思われている方も少なくないと思いますが、保育室が“楽しい”と思え
自分を安心させ、表現することができるようになるためには、しばらく時間が必要です。子どもたちが“幼稚園は楽しい”と思えるように、
私たち保育者は環境にいろいろな工夫をしています。


 “そして、幼稚園が楽しい”と思える頃に、子どもたちは友だちと出会い、自分に出会いながら、さまざまなトラブルや葛藤を経験すると思います。
そんな時、保育室以外の小さな空間が、限りなく安定できる場所となっています。



保育の先駆者である倉橋惣三先生は『教えない教育』という論文を書かれていますが、その中に次のように述べておられます。

【教育の中には教える教育、間接に教える教育、教えない教育がある。その三つ目の教育とは、子どもが知らず知らずに習慣づけられる教育だ】

 三つ目の教育は一般に言われるしつけのことであると思いますが、幼児期は一人ひとりがその子らしく生活や遊びの中で経験して学んでいく
ときであると思います。




ケンカは育ちのチャンス

大人が頭ごなしに「仲良くしなさい」と教え込むと、一見その通りにするかもしれませんが、本当に理解してやっているわけではないのです。
だから、大人がの力でコントロ−ルされて育った子は、その抑えている力が弱くなったり、なくなったりすると、“まさか”という行動にでることがあります。

自分の力で気持ちをコントロールする力が育っていないからです。本当の意味で周りの友だちと関係を作っていくためには、友だちとぶつかり合い
理解しあい、自分たちで考え解決する経験が必要なのです。子どもたちは、友だちと一緒に過ごしていく中で物の取り合いや、思いの生き違いを
経験します。そして、とても嫌な思いや悲しい気持ちを味わいます。でもそんな中でやっぱり友だちと楽しく遊びたいから、今度はどうしたらそんな
思いをしないで済むか考えます。


 そんな育ちのチャンスを考えずに、大人が一方的に「ケンカはやめなさい!」「ごめんなさいは?」と解決し、思ってもいないのに「ごめんなさい!」
を無理やり言わせてケンカを終わりにしてしまうのは、育ちのチャンスを無駄にしていることなのです。




子どもは自分でコントロールする力を身につける

友だちとの気持ちのぶつかり合いや葛藤が起きた後には、保育者が「どうしてそうなったの?」「〇〇ちゃんはどんな気持ちだったの」ということを
尋ねながら、双方の思いに丁寧に関わることで、子どもは相手の気持ちを理解したり、自分の気持ちを伝えたり、どうしたらお互いにとっていいのか
を考えることができるようになります。


 相手の気持ちに気づき、自分の思いを伝えるうちに、お互いが分かりあい、折り合いをつけることが出来るようになります。自分の思いを伝え
分かりあい、トラブルを解決することができた経験は、喜びや自信となって、感情や行動を少しずつコントロール出来るようになっていくのです。
年長組になるころには、トラブルが起きても、その場にいた友だちが間に入って、それぞれの気持ちを聞いてあげたり、周りの友だちがみんなで
話し合ってまとめたり、問題を解決したりするようになります。





小さなケガが子どもの身を守る

子どもがケガをすると、「そばにいたのに・・・」「防げたかもしれなかったのに・・・」と親は子どもの痛がっている姿を見ながら胸が痛むものです。
大きなケガならなおさら自分の不注意に落ちこんでしまうものです。ケガをさせないように「あぶない!あぶない!」を繰り返し、「危ないから
ダメ!」と子どもの行動を制限してしまうと、子どもが本来持っている危険を察知する能力や、自分の身を守る力が育たなくなります。
そして、守ってくれる大人がいないと大きなケガをしてしまうのです。

子どもの身体は柔軟性があり、回復力があります。身体を動かすのがすきな子どもは、つま図いたり、すべったり、ころんだりしてよく擦り傷や
切り傷を作ります。特に冒険心のある子は身体を動かしながら、いろんなことにチャレンジしています。
できるようになると更に難しいことに挑戦しようとします。そうやって身のこなしを体得し、どんどん身体能力を高めています。私たちは子ども達の
チャレンジしようとする心を大切にしたいと思います。





幼児期の育ちは基礎工事だから見えにくいもの

幼児期の教育は土台作り、基礎工事の時代です。土台がなかったり、しっかりしていない家はグラグラして不安定だったり、ちょっとしたことで
倒れてしまいます。でも土台がしっかりしていれば、強風が吹いても地震が来ても、なんとかもちこたえることができます。

人間も同じだと思います。では、人の土台とはなんでしょうか。

乳幼児期はひと言でいうと、人を信じることと、自分を信じることの基礎作りの時期だと思います。

いま、私たちの周りにはさまざまな情報が溢れています。子育てにおいても何が子どもにとって良いのか分からなくなります。

 金沢の幼稚園においても、一斉に逆立ちをして歩いたり、計算をしたり、漢字や俳句を読んだり、英語で保育をしたりなど、さまざまな保育が
されています。お母さんたちは幼稚園選びで保育を見て回り、最終的に何がよいのかわからないと話されます。


 「〇〇ができる」ということは目に見えることなので、子どもが成長していると思ってしまうかもしれませんが、幼児期に育ってほしいことは
『その子らしさ』を大切に援助していきたいと思います。




 子どもが主人公であるためには、大人も安心して、自分自身を出せることが大切です。

子どもを大切に育てるということは、大人が自分を大切にして生きることなのです。保護者同士、保育者同士、保護者と保育者が温かい人間関係
を作ることが子育てにいちばん大切なことではないかと思います。


2015年度も教職員がしっかりティームを組んで、お子さまにとって、楽しい幼稚園生活ができますようにと祈り、努力して参りますので、
保護者の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。                



                                   園長  近藤瑠美子











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