お子様のご入園、ご進級おめでとうございます。

 例年よりも暖かな日差しに、園庭の桜は今年も見事に花開きました。
長いと思っていた春休みはあっという間に終わってしまいました。


「いつまでも仲間だよ」と送り出した40名の子ども達の温もりを懐かしんでいる私に
 
「○○です。卒業しました。お世話になりました。」
「先生とうとう転勤でました。」
「○○です。小さかったあの子が親元から巣立ちです。幼稚園時代の子育てって1ばん楽しかったんですね。」

など、卒園、卒業、転居、合格発表などいろいろな知らせのメールを頂き、5月病には少し早いのに
余韻の中で時間が留まったような日々を過ごしてしまいました。

自然界の息吹きに後押しされ、やっと新しい2014年度をスタートすることができました。




 桜の季節になると思い出すことがあります。それは私が馬場幼稚園に赴任した20数年前のことです。
当時、赴任して分からないことだらけの私は、ばら組の担任をしながら園長見習をしていたので、緊張と多忙の毎日を過ごしていました。


 ある日、園長先生に呼ばれて「近藤さん、幼稚園の先生は花を愛でるくらいのゆとりがないとだめよ。タクシーを呼びなさい。」と言われました。
「えっ!こんなに仕事がいっぱいなのに!」と心の中で思いながら、言われるまま4人の先生と一緒にタクシーに乗り込みました。
タクシーで出かけたのは、卯辰山、その後兼六園、どこも桜は満開でした。桜見物の後は茶店に上がって、花見団子を頂きました。
5月には竹の子飯を食べに別所に連れて行ってもらいました。


 今思うと、桜の美しさよりお店で花見団子や竹の子飯をいただいた、なんとも言えない風情を懐かしく思い出します。
利便性が重んじられる昨今、雑多なことに心が奪われ、神様が備えてくださった美しいものに心を留めることを忘れているように感じます。




 今年度は「ゆとり」と「希望」と求めて歩もうと思います。

そんなことを思いながら園庭を歩いてみると、満開の十月桜の後を受けて、ソメイヨシノ、モクレン、パンジィ、スイセンが一斉に開花し
甘い香りを放っているのに気が付き、幼い日に歌った「ぽかぽか春がやってきた」を口ずさんでしまいました。




 昔の話で恐縮ですが、私が保育者になった頃は「子どもはなにも分からない。できない」「大人を発達の到達とし、成長は早いほどよい」という
発達の捉え方でしたが、今は「子どもたちは学ぼうとする欲求と鋭い感性を持ち、自ら発達し、発達の試練をいくつも乗り越え
自分づくりをしていく」という発達観に変化しました。


 子どもの育つ場としての幼稚園では先生が「このほうがいい」「このほうが使いやすい」と生活の先取りをするのではなく、一緒に暮らしながら
丁寧に集団生活のルールを伝えていきたいと思っています。



 1年のある時期がくると、園生活がなんだかしっとりしてきたと感じる時がありますが、それは自然にしっとりするのではなく、
先生が子どもに寄り添いながら作り上げていくものです。先生が「これは大事なもの」と思うものを子どもも「大事なもの」と思えるようになるし
子どもが「一大事」と言って知らせてくる時、行ってみると大人から見ても本当に「一大事」であることがあります。

片付けも「ここは自分達の大事なところ、これは自分達の大事なもの」と思えるようになるまで大人が丁寧に接することが大事だと思います。



 今、大人の願いがどうしても、「かしこく」「はやく」「上手に」となりやすい中で、子ども達の中には、安心して自分らしさを出せないでいる子に
もんもんとしている子どもに出会う ことがあります。以前、こんなことがありました。




年長の女の子が「わたし、お母さんに だっこしてもらったことあるかな」と聞いたことがあります。
「もちろんあるよ。お母さんはAちゃんのこと大好きだもんね」と答えると、Aちゃんは「ほんとかな」と首を傾げました。
「Aちゃん、お家に帰ってお母さんにだっこしてもらっている写真見せてって、頼んでごらん」とはなしました。
すると、Aちゃんは「写真じゃ分からんもん」と言いました。「なるほど、そうか」と思いながらも正直驚いてしまいました。


 Aちゃんは長子でお母さんとの信頼関係がつき始め、一方では嫉妬心も出始めた頃、下に弟が生まれたのでした。
早くから大人を見て模倣する子で、大人のように行動することで、大人の期待に応えようとしていました。本当はお母さんに甘えたいのに
お姉さんらしく振る舞い、甘えることを学習してこなかったための、不安定や自信のなさが、友だちとの人間関係でトラブルとなって現れていました。



私たちはほんとうに子ども達のよりどころとなる大人になっているか、安心できる親子関係をどのようにつくればいいのか
育とうとする子どもと育てようとする大人のかかわり方はどうあるべきか、私たち保育者も問いかけ、問い直しつつ歩みたいと思います。




 桜の木が美しい花を咲かせ葉を茂らせるには、しっかりした根っこ、太い幹や茎を育てることが大切です。このことは人間も同じです。
子どもが大人になったとき、自分の力で人間らしく生きていけるようになるためには、その子の根っこ、幹をしっかり育てることがポイントです。
そうすれば、子ども達が大人になったとき、一人ひとりがその人らしく素敵な花を咲かせることでしょう。

お子様にとって楽しい幼稚園生活ができますようにと祈り、努力をしてまいりますので皆様のご理解とご協力を心からお願いします。           





                                                             2014・4            園長  近藤瑠美子