暮れから日本列島に寒波が襲来し、大荒れで交通機関が大混乱する中で新しい年2011年が幕開けしました。
 皆様はお正月をいかがお過ごしでしたでしょうか。

私は年末に帰省した長女夫婦と一足早いお節をいただき、除夜の鐘を聞きながら新年を迎えました。
 元旦の朝、娘たちは仕事の関係でゆっくりすることもなく、寒波が和らぎ無事運航した飛行機であわただしく帰って行きました。
 そして、賑やかだったお正月気分も彼女達と一緒に帰ったような静けさとなりました。

今は、お正月の迎え方も大きく様変わりしていますが、まだまだ、形を通して今も伝えられているものがたくさんあります。
  お正月飾りもその一つだと思います。

飾りの中の「ゆずり葉」という常緑樹をみると、明治の詩人河井酔謎茗(かわいすいめい 1874〜1965)の
 「ゆずり葉」を思い出します。


   輝ける大都市も

そっくりお前たちが譲り受けるのです。

読みきれないほどの書物も

みんなお前たちの手に受け取るのです。

幸福なる子供たちよ

お前たちの手はまだ小さいけれどー。

世のお父さんお母さんたちは

何一つ持ってゆかない。

みんなお前たちに譲ってゆくために

命あるもの、よいもの、美しいものを

一生懸命に造っています。 

                 「花鎮抄」より  

  大人から子どもたちに、私たちは何を譲っていくのでしょうか。
何を伝えようとしているのでしょうか。

「命あるもの、よいもの、美しいものを」はすべて神さまが造って下さったものです。
それを私たちが受け継ぎ、また一生懸命子ども達に譲っていくことができているのでしょうか。
お正月飾りの「ゆずり葉」をみると、私たち大人が今の生き方を問われているような気がします。


  保育者が子どもをみるときに『子どもの目線で見たり、考えたりすることが大切である』といわれ、
私たちは『子どもの目線』で子どもの気持ちになって考えることができるように努力をしています。

しかし、振り返ってみると高さを同じにして見るという点では子どもの高さを忘れて
子どもの世界を語っていることに気づかされます。

子どもと同じ高さになるためにしゃがんで見てみると、大人の足しか見えなかったり、
反対に葉っぱの裏の小さな虫や、地面の中から顔をだしている幼虫がみえたり、
大人が見落としてしまっている世界を子どもたちが楽しんでいることを知らされます。


  

以前、新聞に『子どもの未来は明るいか』と問いかける記事を見つけました。

幼児を取り巻く親子関係が多様な価値観で、ますます表面的になっているために
子どもは親の愛を受けとめるために試行錯誤しているように感じます。

 そのうえ、子どもが親の持ち物になったり、夢や期待を実現する手段のようになってしまい、
自分勝手な子ども像を押しつけているような大人が増えているようにさえ思います。


 心理学者の河合隼雄氏は次のように語っています。

【世界がもっともっと多様化し、国際化してくると、教えてもらったことをそのままやればうまくいくわけではなくて、
   新しいことにどう対応するか、逆に自分がどんな新しいことを考えられるかというところに勝負がかかってくると思うのです。
   そのとき、我々は新しいことを教えられるはずはないのですから、ちょっとぐらい新しいことや変わったことがあったりしても
   逃げたり、まごまごしたりせず、それに当たっていける人をつくらなければならない。
   それは、『好きなことをして大丈夫ですよ』と言われる体験をもっているかどうかが勝負になっていると思うのです。】

  

 私は子ども達と共に歩んで30年が過ぎようとしていますが、その間、子どもを育てるときに何を教えるかとか
何をやらせるかというよりも、『大丈夫だよ。自分の好きなことをやっていいんだよ』という
安心感、安定感をあたえる体験が大きな財産になると思いながら、子どもたちに接してきました。


子どもたちが同年齢の集団の中で生活することは、緊張したりストレスを感じたりするものです。
そんな子どもの心を開き、ひとりひとりの子どもが自己発揮しながら自信をつける、精神的に安全な居場所が幼稚園なのです。


幼稚園では『言い張る』自分でなく、『みんなと考える』自分に成長していけるように
ひとりひとりの心の動きを受けとめるように努力していきたいと思います。

けんか等の体験を通して,他の人の痛みがわかり、『楽しさ』『うれしさ』『悔しさ』『悲しさ』を
他の友だちとともにする心地よさを体験しながら、自信をつけていく子どもたちであってほしいと願いつつ
今年も子ども達とともに歩みたいと思います。  

前を歩かないでください。続くことができませんですから。

後を歩かないでください。導くことができませんですから。

かたわらを歩いてください。そして友となってください。 



近藤瑠美子  (2011.1.7)




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